【仮想通貨】暗号資産への名称変更から読み解く仮想通貨の課題
2018年12月、日本の金融庁はビットコインを始めとした仮想通貨(暗号通貨)の名称を、『暗号資産』に改めると発表しました。
一見すると、単に名称変更を行うというだけのトピックですが、このトピックから現在における仮想通貨の課題や市場の位置付けなどを少し読み取ってみようと思います。
金融庁はビットコインなどインターネット上で取引される仮想通貨の呼び名を「暗号資産」に改める。
仮想通貨?暗号通貨?暗号資産?
そもそも、仮想通貨という呼び方は日本のメディアを中心とした人達が使用している名称であり、海外ではビットコインなどのことを仮想通貨とは呼ばず、『暗号通貨』と呼んでいました。
ビットコインなどの新しい通貨は、ブロックチェーンという高度な暗号技術を活用した『分散型台帳技術』により実現されています。
デジタルなお金であるという点では電子マネーなどと同じに見えますが、ブロックチェーンの暗号技術が使われていることこそ、仮想通貨・暗号通貨を支えている大切な要素です。
だからこそ、海外ではビットコインなどの新しい通貨が誕生したとき、Virtural Currency(仮想通貨)と呼ばず、Crypto Currency(暗号通貨)と呼んでいるのです。
本ビジネスチャンネルにおいても、仮想通貨ではなく暗号通貨という名称で統一してきましたが、暗号通貨のほうが正しい名称であると考えていたからです。
このような名称のズレは、新しいテクノロジーにより誕生したばかりの通貨であるからこそ、発生していた状況であったといえるでしょう。
なぜ『暗号資産』なのか
ではここで、なぜ金融庁が改めて統一すると発表した呼び方が暗号通貨ではなく、『暗号資産』なのでしょうか。
2018年は、先にも述べた「誕生したばかり」の仮想通貨(暗号通貨)に対して世界各国が対応すべく、健全な市場の基礎を作るための規制を数多く整備していきました。
日本においては、2017年に資金決済法が改正され、改正資金決済法(通称、仮想通貨法とも呼ばれる)が誕生しました。
この法律により、仮想通貨交換業者という基準が定められ、仮想通貨のより健全な普及への取り組みが整備されています。
日本だけでなく、その他各国においても独自の法律を制定するなど、インフラ整備が進行しています。
そのようななか、2018年において各国それぞれの規制だけではなく、世界経済や金融に関する首脳会議であるG20でも仮想通貨(暗号通貨)が大きな議題として挙げられました。
2018年のG20は3月・7月・10月に開催されており、仮想通貨(暗号通貨)に関する議論が重ねられています。
このG20などにおいて統一されていた呼称が、暗号通貨ではなく『暗号資産』だったのです。
このような、世界的に統一されはじめている名称に合わせて、日本の金融庁による名称改定につながっています。
暗号通貨の課題を読み解く
この名称改定のトピックを更に深く読み解いてみます。
ここでぜひ考えていただきたいポイントは、G20などで統一されていた名称が、なぜ暗号通貨ではなく暗号資産だったのでしょうか。
このポイントは、今の暗号通貨が抱える大きな課題につながっていると考えます。
2018年7月時点におけるG20で行われた議論について、日本の財務省からこのような報告文が発表されています。
暗号資産の基礎となるものを含む技術革新は、金融システム及びより広く経済に重要な便益をもたらし得る。
しかしながら、暗号資産は消費者及び投資家保護、市場の健全性、脱税、マネーロンダリング、並びにテロ資金供与に関する問題を提起する。
引用:財務省HP
つまりは、金融市場の視点から暗号通貨をみると、一般的に誰しもが利用するようになるまでには、まだまだ数多くの問題が残されているということです。
言い換えると、現在の金融市場において「通貨としてはまだまだ通用しない」というニュアンスであると考えます。
もちろん、世界的な規制やインフラ整備が進行し市場の健全化が進むにつれて、暗号通貨の市場がどんどん拡大し続けるようになるでしょう。
しかしながら、暗号通貨の課題はこうした規制以外の側面もあると考えています。
例えば、ビットコインに焦点を当てて考えると、2017年に大きな問題として注目されたスケーラビリティ問題(送金速度の遅延問題)などがあります。
このような技術的な問題や、各暗号通貨におけるコミュニティの問題、暗号通貨を活用する人のリテラシーの問題など、数多くの側面で課題を抱えています。
もちろん、「暗号通貨が駄目だ」という意味ではありません。
現状において、暗号通貨が『通貨としての機能』を果たせるようになるためには、長い道のりが残されているということです。
暗号通貨の登場自体に対しては、G20においても経済的に大きなメリットをもたらし得ると言われています。
暗号通貨のもたらすメリットを実現するために、数多くの規制や技術的な研究が重ねられているのです。
課題は残されているものの、暗号通貨そのものは今後においても、長期的に大きな成長を遂げていくことは間違いないでしょう。
ここでのポイントは、現時点における暗号通貨はインターネット上のデジタル資産としての位置付けであるということです。
だからこそ、暗号通貨ではなく暗号資産と呼ばれているのです。
資産価値を見極めること
金融庁による名称変更も、今の暗号通貨市場を表すような出来事の一つです。
今年である2019年は、ビットコインが誕生してからちょうど10年を迎えています。
それでもまだまだ誕生したばかりのものであり、今後において巨大な成長市場となることでしょう。
現状において、日本人が保有する暗号通貨の割合は、世界的にも大きな割合となっています。
「億り人」などという言葉が使われるように、暗号通貨を保有する日本人の多くの方は、資産運用を目的としています。
暗号通貨を保有している方は、価格の変動だけに着目するのではなく、市場の状況を広く読み取りながらも長期的な視点が必要です。
ビジネスチャンネルでは、複雑化する暗号通貨の情報を皆様にわかり易く発信し続けていきますので、ぜひ参考にしてください。
執筆者
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松永 俊紀 株式会社アプリ・ライフ・クリエーション代表取締役 国内外のブロックチェーン開発者や仮想通貨のマーケッターと情報を共有し、日本国内の一般層における仮想通貨リテラシーの向上を目指しコンテンツを配信中。 紛失リスクの高い仮想通貨の資産管理に特化し、セミナー講師やコンサルタントとしても活動を進めている。 |
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